国内外のファッショニスタがこぞって取り入れている Alexander McQueen(アレキサンダー・マックイーン)は、イギリス・ロンドン発のブランド。創業者である Alexander McQueen より受け継がれたアバンギャルドなデザインとテーラードの技術は、ファッション業界でも唯一無二の存在感を放っています。ストリートスナップや SNS でも常連のオーバーサイズスニーカーといった名品はもちろん、複雑なカッティングが光るウェアから、アイコニックなスカルモチーフのアクセサリーまで、どのアイテムも目が離せません。
本記事では、そんな Alexander McQueen の歴史や代表アイテムなど、その魅力を徹底的に解説します。
Alexander McQueen の歴史
<モードの反逆児> Lee Alexander McQueen、労働者階級から仕立て屋へ
Lee Alexander McQueen(リー・アレキサンダー・マックイーン)は、1969 年のロンドンに、タクシー運転手の父と教師の母のもと六人兄弟の末っ子として生まれました。16 歳で高校を中退し、高級紳士服店が集まるサヴィル・ロウ通りのAnderson & Sheppard、Gieves & Hawkes といったテーラーで腕を磨きます。皇太子のスーツの裏地に挑発的なメッセージを刺繍したという逸話が残るなど、当時から反骨精神に満ちた青年でした。
その後は舞台衣装を手がける Angels & Bermans に務め、16 世紀の衣装から現代的なスーツの仕立てまで、6 つの異なるパターンカッティングの手法を身につけた McQueen。彼のデザインの核となる演劇的な要素はここで習得したものでした。
さらに Koji Tatsuno やミラノの Romeo Gigli を経て、イギリスの名門ファッション学校セントラル・セント・マーチンズへ入学します。そして 1992 年、<切り裂きジャック>をテーマにした彼の卒業制作が、ファッション業界の注目を集めることになります。伝説的ファッションエディターの Isabella Blow がこのコレクションをすべて買い上げた一件は有名で、二人はここから長く親交を深めました。Blow が彼を英 Vogue 誌に紹介したことにより、McQueen は広く世に知られます。
ブランドの設立と発展
McQueen は 1992 年、卒業と同時に、ロンドンで自身のブランドを設立しました。翌年にはロンドン ファッションウィーク、いわゆるロンドンコレクションでランウェイデビューを果たします。初のショーは、マーティン・スコセッシ監督作品にインスパイアされた「Taxi Driver」。父親にもオマージュを捧げたコレクションでは、サランラップやラテックスといった素材を使用して注目を浴びます。また、この時発表したヒップが見えるほどのローライズパンツ、<バムスター>パンツが一世を風靡し、90 年代のトレンドを作り出しました。
Givenchy のデザイナーに抜擢
瞬く間に時代の寵児となった McQueen は、1996 年、弱冠 27 歳でパリの老舗クチュールメゾン Givenchy(ジバンシィ)のデザイナーに抜擢されます。
労働者階級出身の<反逆児> McQueen によるファーストコレクションは、ロゴの「G」から着想を得たギリシャをテーマにしたもので、テーラードの技術と前衛的な美を持ち込み、保守的なパリのモードに新しい風を吹かせることに成功しました。
当時フランスのメゾンでは、職人がアトリエに出入りすることが禁じられていましたが、McQueen は因襲を打ち破って自らのやり方を貫き、職人たちを気にせず招き入れたといいます。
Alexander McQueen, Butterfly-print dress, spring/summer 2008 - Mary B. Jackson Fund
現ケリング傘下へ、ブランドの拡大
その後もセンセーショナルなランウェイと斬新なコレクションで注目を集め続け、ブランドとしての Alexander McQueen も拡大していきます。1999 年には一時的に拠点を NY に移したものの、翌年ロンドンに復帰。2000 年にカジュアルラインの McQueen’s(マックイーンズ)、2006 年にはセカンドライン McQ(マックキュー)の展開も開始します。
2000 年には、当時の GUCCI(グッチ)グループ に過半数株を売却し、PPR (現 Kering(ケリング))傘下に入りました。2002 年には、パリ ファッションウィーク、通称パリコレにもデビューしています。
Sarah Burton が受け継ぐ新時代
34 歳の若さで大英帝国勲章を授与され、英国ファッション協会の<デザイナー・オブ・ザ・イヤー>に 4 度も輝くなど、その地位と名誉と人気を確固たるものにした McQueen ですが、2010年、40 歳でこの世を去りました。
そんな創業者の精神とブランドを引き継いだのが、現クリエイティブディレクターの Sarah Burton(サラ・バートン)です。McQueen と同じくセントラル・セント・マーチンズで学んだ彼女は、 1996 年から Alexander McQueen ブランドで働き、創業者の右腕のような存在に。 2000 年からはウィメンズウェアのヘッドデザイナーを務めていました。
そんな彼女が率いる Alexander McQueen は、優れたテーラーリングの技術とアバンギャルドな感性を受け継ぎつつ、より柔らかでリアルな繊細さが加わり、今日でも高い評価を得ています。キャサリン妃のドレスを仕立てたのも Sarah Burton でした。
Alexander McQueen の人気アイテム
一貫した世界観を確立してきた Alexander McQueen ですが、アイテムを一つ取り出してみるだけでも、ブランドの魅力を余すことなく堪能できます。ビギナーでも取り入れやすい定番ベストセラーから、一歩踏み込んだ通なカテゴリまで、人気の商品をご紹介します。
#01 オーバーサイズスニーカー
現代の Alexander McQueen を代表するアイテムが、《Oversized sneaker》ことオーバーサイズスニーカーです。クリーンな白いアッパーを基調にしながらも、その名の通り誇張された重量感のあるソールがモードなアクセントを添えたスニーカーは、シンプルながらも Sarah Burton の美学が感じられる名品。ヒールカウンター部分は様々なカラーやテクスチャーで展開されているので、自分に合った一足が見つかります。
#02 トレッドスリックスニーカー
もう一つの人気スニーカーが、ブーツの要素を取り入れた《Tread Slick(トレッドスリック)》。ボリュームのあるラバーソールとキャンバス地のアッパーで、重めでモードなシルエットの中にも適度な軽さとカジュアル感をプラスしています。国内外のセレブリティが愛用していることでも知られ、カジュアルにも綺麗めにもマッチする万能アイテムです。
#03 Four Ring バッグ
デコラティブなナックルダスター風ハンドルが特徴のアイコンバッグ 《Four Ring(フォーリング)》。指を入れると 4 つのリングをはめているように見えるデザインは、一目でブランドのアバンギャルドで反骨的な精神が伝わる傑作。定番のクラッチから使いやすいサッチェル型まで、幅広いモデルが展開されています。
#04 The Curve バッグ
バケットバッグにロープを巻きつけたようなフォルムが特徴的な《The Curve(カーブ)》。2021 年に発表された新作ですが、Alexander McQueen を象徴するモチーフ、<ハーネス>にインスパイアされた、大胆でモダンなデザインがたちまち人気に。高い収納力や長さが調節可能なストラップなど、実用面でも重宝するバッグです。
#05 ドレス
Alexander McQueen ならではの複雑なパターンと構築的なシルエットが堪能できるワンピースは、一着は持っておきたい投資アイテム。モダンな素材で、まるで中世のドレスのようなラインを実現したアイテムはまさに芸術。それでいて日常のちょっとしたお出かけにもぴったりと馴染んでくれるところに、Sarah Burton のリアルなセンスが光っています。
#06 テーラードジャケット
サヴィル・ロウ出身という創業者のテーラード技術は、ブランドの核をなす要素。Alexander McQueen ならではの美学を感じるなら、やはりジャケットに挑戦してみましょう。メンズテーラードを巧みにウィメンズに落とし込み、直線的でシャープなショルダーラインと美しいウエストが強くしなやかな女性像を演出します。
#07 スカーフ
Alexander McQueen を代表するスカルモチーフを取り入れるなら、スカーフをおすすめします。全面にプリントが入っているので一見インパクト大ですが、首元に巻いてみると不思議と馴染むしなやかさ。
#08 ピアス
<スカル>を立体で身につけたいなら、ピアスを選んでみましょう。ブランドらしいデコラティブなデザインも、耳元にさりげなく取り入れられるので、シンプルなルックにもロックなアクセントを添えてくれます。
#09 ベルト
McQueen らしいコルセットやハーネスのモチーフは、ハードで存在感のあるベルトに昇華されています。それだけでコーディネートの主役になってしまうコルセットベルトはもちろん、ダブルやチェーンなどのディテールにも注目。