フランスを代表するラグジュアリーブランドの一つでありながら、常に時代の先端をいくBalenciaga(バレンシアガ)。毎期「最もホットなブランド」のトップに輝く理由は、現クリエイティブディレクター、Demna(デムナ)の前衛的でストリートなエネルギーにあります。ミニマルながら意表をつくプロポーションや、テクニカルな素材使いの服づくりはもちろん、イットバッグやイットシューズなど、注目を集めるアクセサリーのセンスも抜群。
そんな Demna のビジョンと世界観は時代に合わせて進化し続けていますが、同時にメゾンの伝統への深いリスペクトも感じられます。クチュリエの Cristóbal Balenciaga(クリストバル・バレンシアガ)が、フランス・パリでブランドを立ち上げたのは、1917 年のことでした。
本記事では、創業120年以上を誇る老舗メゾンの歴史や歩み、アイコニックなアイテムやサイズ & フィットガイドなど、 Balenciaga のすべてをご紹介します。
Balenciagaの歴史
Cristóbal Balenciaga、<クチュリエの中のクチュリエ>とブランドの誕生
1917 年スペインはバスク地方出身のクチュリエ、Cristóbal Balenciaga は、 サン・セバスティアンにブティックを開店しました。そしてその 2 年後には正式に会社を設立。スペイン王室も顧客に抱えるメゾンへと成長させ、マドリードやバルセロナにも出店しました。しかしスペインの内戦が勃発し、Cristóbal は戦禍から逃れる形で 1937 年にパリへ。ジョルジュ・サンク通り 10 番地に本店をオープンし、初のオートクチュールコレクションを発表したのです。
その後もファッションを改革し続け、1946 年には<トノー(樽型)>ラインやエンブロイダリーのボレロなど、ファッション史に残る名作を生み出しました。他にも、体にフィットしないボクシーなスーツを発表するなど、実験的かつ構築的なボリュームを数多く考案。当時、デザインとパターン、縫製まですべてこなせるクチュリエは彼だけだったとも言われています。<デザイナーの王様>や<クチュリエの中のクチュリエ>と呼ばれたそのモダンなクリエイティビティは、多くのデザイナーたちに影響を及ぼしました。
Cristóbal Balenciaga, designer Chemise dress, ca. 1957 / Courtesy of the RISD Museum, Providence, RI
メゾン休止、後継デザイナーを経て Kering 傘下へ
亡くなる 4 年前の1968 年に、Cristóbal はメゾンを閉鎖します。その喪失を嘆く顧客にどこで服を仕立てれば良いのかと聞かれると、ただ「Givenchy(ジバンシィ)」とだけ答えたという逸話も。彼の引退と死と共に、しばらくメゾンは休眠することになりました。
しかしその後、フランスの Jacques Bogart (ジャック・ボガール)社が 1986 年にメゾンを買収し、Michel Doma(ミッシェル・ゴマ)をデザイナーに抜擢。それにジョセフ・ティミスター(Josephus Thimister)が続き、少しずつブランドが再開します。
そして 1997 年、Nicolas Ghesquière(ニコラ・ジェスキエール)がアーティスティックディレクターに就任したことで、メゾンは大きな転換点を迎えました。Ghesquière のモダンなクリエーションがブランドを本格的に蘇らせ、大きな成功を収めたのです。任期中の 2001 年には、現在のオーナーである Gucci Group(グッチグループ)(現 Kering(ケリング))がブランドを取得しています。
Demna がアーティスティックディレクターに就任
Nicolas Ghesquière の退任後、Alexander Wang(アレキサンダー・ワン)の時代を経て、2015 年にジョージア出身の Demna Gvasalia(デムナ・ヴァザリア)(現 Demna)がクリエイティブディレクターに起用されました。これがメゾンの新たな一章を開きます。
Demna は、ベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーを卒業後、Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)や Maison Margiela(メゾン・マルジェラ)で経験を積み、 Vetements(ヴェトモン)のヘッドデザイナーとして活躍。Balenciaga と並行して、2019 年まで同ブランドを手がけていました。
脱構築的なストリートの感覚を取り入れてクラシックなアイテムを再解釈してみせる Demna の鮮やかな手腕と、時代を切り開いていくビジョンにより、Balenciaga は常に先端を行くブランドになったのです。
Balenciaga の人気アイテム
毎シーズン革新的なランウェイで新しいコレクションを披露している Balenciaga ですが、クチュールメゾンらしい前衛的なショーピースだけでなく、Demna の絶妙なストリート感覚が感じられる定番アイテムたちも多数揃います。エッジのきいたラグジュアリーを日常にも手軽に取り入れられるものばかりなので、ぜひチェックしてみましょう。
#01 バッグ
Balenciaga のバッグを見る
Demna のセンスが光るイットバッグたちは、国内外のセレブやファッショニスタが夢中になるアイテム。構築的なフォルムの Hourglass(アワーグラス)や XX をはじめ、ロングランのモデルを再解釈した Neo Classic(ネオ クラシック)、Y2K トレンドとの相性もぴったりな Le Cagole(ル カゴール)まで、幅広い素材と色、サイズが揃います。シンプルな着こなしでも、Balenciaga のバッグを一つ取り入れるだけでエッジのきいたスタイルが完成します。
Hourglass
創業者が考案した、ウエストが砂時計のようにくびれたシルエットの<バスクウエストコート>にインスパイアされたのが、Hourglass バッグです。底面のカーブところんとした厚み、メタルのロゴが特徴。
Neo Classic
2000 年代初めに登場した人気バッグ Classic(クラシック)が、20周年を記念して蘇りました。Demna 手がける Neo Classic は、ジップクロージャーやタッセルといったディテールはそのままに、かっちりしたシェイプでモダンにアップデートされています。
Le Cagole
こちらも Classic を進化させたアイコンバッグ、 Le Cagole。柔らかな質感のレザーとスタッズのディテールに、ハートのミラーがポイントです。トレンド続行中の Y2K なスタイルにもはまる便利なアイテム。
XX、Navy Cabas、Ville、Bistrot
その他、22年春夏から登場したミニマルで彫刻的な XX、キャンバス地で持ちやすいロングセラー Navy Cabas(ネイビーカバ)、ビジネスにも使えそうなクリーンな Ville(ヴィル)、モダンでポップなかごバッグ Bistro(ビストロ)など、様々なイットバッグの中から豊富に手に入ります。
#02 スニーカー
Balenciaga のスニーカーを見る
今 SNS で話題の<ボロボロ>シューズ Paris Sneaker(パリ スニーカー)はもちろん、ダッドスニーカーのトレンドをけん引した Triple S (トリプル S)など、新作が出るたびに注目を集めるのが Balenciaga のスニーカー。Demna らしいストリートの感覚がうまくラグジュアリーに落としこまれたアイテムたちは、カジュアルなスタイルのアクセントにも、エレガントなコーデの外しにもなるので、一瞬でモードな足元が完成します。
Triple S
元祖ラグジュアリーダッドスニーカーと呼ぶにふさわしい Triple S(トリプル S)。今やファッショニスタの定番アイテムになりましたが、単に<アグリー>なだけではない Demna のこだわりが感じられるディテールにも注目です。ランニングシューズ、バスケットシューズ、トラックシューズの 3 つを掛け合わせた形状が<トリプル>の由来で、異素材をミックスしたアッパーや、下に向かってボリュームが出る計算されたシルエットが魅力。
Track
トレッキングシューズ風の Track(トラック トレーナー)は、スポーツに加えて新たにアウトドアの要素も取り入れたモデル。より複雑な要素を組み合わせたアッパーとレイヤードソールは、なんと100近いパーツから成り立っているそう。定番ダッドシューズより軽やかなシルエットなので、より手軽に取り入れられます。
Runner
Balenciaga のアイコニックなスニーカーの中でも、スポーティーさに磨きをかけたのが Runner(ランナー)です。ランニングシューズを複数組み合わせたアッパーは、お馴染みのヴィンテージ加工だけでなく、ステッチや接着の跡などをわざと残したハンドメイド感も特徴です。
Speed
こちらもロングランのヒットスニーカー、Speed(スピード)。ニットのアッパーがぴたりと足にフィットし、超軽量。まるで履いていないかのような快適さが魅力のモデルです。クリーンに履きこなせるので、大人にも取り入れやすいはず。
Paris Sneaker、Defender、X-pander
最新作の Paris Sneaker(パリ スニーカー)はヴィンテージ感のあるローテクなキャンバススニーカーと、今までとは一線を画す仕上がりに。また、タイヤのようなソールが特徴の Defender(ディフェンダー)や、バネのようなヒールが印象的な X-pander(エキスパンダー)など、個性的なシューズを履きこなせば、普段のコーデも即モードでアーティスティックなものに。
#03 ミニ財布
#04 T シャツ
#05 シャツ
Balenciaga のベストコラボレーション
Balenciaga x Kanye West
Kanye West(カニエ・ウェスト)と Demna とは、Balenciaga 就任以前からの付き合いです。Vetements 設立直後の 2014 年頃から協業し、2015年には Kanye が手がけた《Yeezy Season 1》コレクションでコラボレーションアイテムを発表。さらに、亡くなったラッパー DMX の遺族へ収益を寄付するため、Tシャツをデザインするなどの取り組みも。Kanye のアルバム『Donda』の発売にあたっては、記念のカプセルコレクションを発売しました。
Balenciaga x Gucci
厳密に言えば<コラボレーション>ではありませんが、非常に刺激的なパートナーシップになりました。まず、Gucci(グッチ)のクリエイティブディレクター Alessandtro Michele(アレッサンドロ・ミケーレ)が、100周年を記念した《Aria》コレクションで、<ハッキングラボ>と称し Balenciaga のアイコンを再解釈。Demna の許可を得て、<アワーグラス>シルケットのスーツジャケットや一目で分かるモノグラムロゴなど、広く知られたBalenciaga のシグネチャーシェイプとグラフィックを使い、Gucci の視点で新たなエネルギーに満ちたアイテムを制作し、大きな話題を呼びました。
Yeezy Gap Engineered by Balenciaga
Kanye West(カニエ・ウェスト)による Yeezy (イージー)と、言わずと知れたアメリカンカジュアルアパレル Gap(ギャップ)とのトリプルコラボレーション、Yeezy Gap Engineered by Balenciaga(イージー・ギャップ・エンジニアード・バイ・バレンシアガ)は、まさに異色ともいえる組み合わせ。オーバーサイズの T シャツやスウェットなど、 Demna の脱構築的なラグジュアリーと、Yeezy のクールなスポーツストリート、そして Gap のアメリカンカジュアルが見事に融合したコレクションは、予約開始当初から大きな話題を呼びました。
Balenciaga のサイズ & フィットガイド
ストリートに強く影響を受けている現行 Balenciaga。シグネチャーのオーバーサイズなアプローチにより、メンズもウィメンズも幅広いサイズを展開しています。基本的にはファーフェッチのサイズ表が参考になりますが、好みのスタイリングなどによりサイズ選びにもコツがあります。
Balenciaga ウィメンズウェアのサイズ感
ウィメンズのパーカー、Tシャツ、ドレス、パンツも、一般的に表記通りのサイズになっています。このカテゴリーのアイテムは通常サイズを選ぶのがおすすめです。
例えば、 ウィメンズの M サイズは UK の 10、イタリアの 42、フランスのサイズ 38 に該当し、日本サイズで言うと 9~11 号。
ただし、ファーフェッチのサイズガイドは独自のもので、Balenciaga のウェブサイトとは寸法に多少の違いがあるので注意が必要です。モデルの着用画像を参照しつつ、オーバーサイズモデルは通常通りのサイズか好みによりサイズダウンを。スリムフィットのものは通常サイズかサイズアップをしてみましょう。
メンズウェアのサイズ感
ファーフェッチのサイズ表によると、例えば、メンズウェアの L サイズは、UK と US サイズの 40、また、フランス・イタリアサイズの 50 に該当します。
ブランドのアイコニックなグラフィックTシャツやパーカー、ジャケットのサイズを選ぶ際は、通常のサイズ選びで大丈夫。ただ、これらのカテゴリーのアイテムは、基本的にオーバーサイズのフィットでデザインされているので、好みに合わせて 1 サイズダウンしても問題ありません。パンツも同様ですが、フランスサイズが採用された一部のアイテムでは、例えばサイズ 50 であれば L サイズなど、スタンダードサイズに換算しましょう。