WORDS BY STEPHEN YU
ロサンゼルスを拠点に活躍するDominic Ciambrone (ドミニク・シャンブロン)、またの名をThe Shoe Surgeon (ザ・シューサージョン)=「靴の外科医」。元靴修理職人のシューデザイナーであり、世界でも希少なビスポークスニーカーのクリエーターです。
そんな彼が、ファーフェッチとともにスニーカーカスタマイズのチュートリアルビデオを製作。世界にふたつとないスニーカーをつくり上げるために Surgeon Studios チームや彼自身が使っている、貴重なテクニックを伝授してくれました。
今回は、The Shoe Surgeon のスクールディレクター、Neil Caro(ニール・カーロ)が、アイコニックな《 Nike Air Force 1 Low(ナイキ エアフォース1 ローカット》を使ったスニーカー分解の基礎について紹介します。
「《Nike Air Force 1》は、スポーツをファッションの世界へ持ち込んだともいえる一足。この靴には、世界中のあらゆるスニーカーの重要な基盤となるパーツが含まれています」――ドミニク・シャンブロン、The Shoe Surgeon
基礎知識
スニーカーの主要パーツといえばアッパーとソールですが、実はそれぞれに、複数のパーツが複雑に組み合わさってできています。大抵は縫い付けか接着で作られていて、このアッパーとソールを丁寧に外し、型紙を作成して再び組み立てることで、カスタムスニーカーが完成。こうした作業を行うにあたっては、やはりスニーカーの構造を知っていることが重要です。ここで、それぞれのパーツの詳細を見ていきましょう。
外側
- シューレース
- タン
- トゥボックス(バンプ)
- トゥキャップ(マッドガード)
- ラタラル・クォーター(足外側)
- ミディアル・クォーター(足内側)
- アウターヒールカウンター(x2)
- カラー(足首にフィットさせる目的で、多くはフォーム、もしくは柔らかい素材をクッション材として使用)
- アイレットロウ
- ヒールタブ
- スウッシュ
- ヒールカラー(マスタッシュ)
ソール
- アウトソール(耐摩耗性のある硬いゴム製)
- ミッドソール(快適な履き心地を生み出すクッション性あり)
内側
- トウ・パフ(靴の前面を形作る、薄手のTPU素材)
- 内側のライニング(継ぎ目を覆い、摩擦を防ぐための柔らかなメッシュ)
- カラーフォーム
- 内側のヒールカウンター(靴のかかとを守り、支えとなるサーモプラスティック)
- インソール(より快適な履き心地を生み出す、柔らかなフォーム)
- ストロベルボード(ソールと組み合わせる前に、アッパーを固定させるのに使用)
*スニーカーはモデルによって構造も製法も違います。分解前にくれぐれもその点にご留意ください。
「3Dプリントされたソールやパーツ、複雑なレザーパーツやファブリックなど、一足のスニーカーをつくるにもいろいろな素材、そして製法があります。そのため、分解する前にその違いについて知っておくことがとても重要。パーツの数や型紙などは一足一足異なり、例えば、Nike Flyknit Presto (ナイキ フライニット プレスト)や adidas NMD (アディダス NMD)は、一体成型のアッパーをプラスティックのリッジで支える構造です。一方で、 Air Jordan 1 (エアジョーダン 1)のアッパーは、およそ23のパーツからできています」
分解前の準備
必要なツール:
‐ リッパ-
‐ カッターナイフ
‐ ハサミ
‐ マーカーペン
‐ Nike Air Force 1 Low またはお好きなスニーカー
*それぞれのパーツを、ゆがめたり、破ったり、誤って切ったりすることなく残すのはなかなか難しい作業。なるべくカッターは使わず、ステッチや縫い目を切るための専用ツールであるリッパーを使うのがおすすめです。
気を付けたい点:
‐ 適切なツールを使うこと
‐ ツールの刃先を常に自分とは反対側へ向けること
分解作業
1. ソールとストロベルボードを外す
始める前に、シューレースとインソールを外しましょう。
1-1. リッパーを使って、ソールのトップからサイドに施されたステッチを切り、ソールを完全に取り外します。
1-2. 靴をさかさまにして、ストロベルボードとアッパーが縫い合わされた赤いステッチをリッパーを使って切っていきます。間口が十分に広がったら、ハサミを使って残りの糸を切り、ストロベルボードを外すこと。
1-3. これで、アッパーの分解が始められます。一つずつパーツを丁寧に外していきましょう。
2. アッパーを分解する
*どの部分がトップレイヤー(オーバーレイヤー)かを見極めたうえで最初に外し、順を追って、その下側のパーツ(アンダーレイヤー)に進んでください。
Nike Air Force 1 Low の場合、ヒールカラーがヒールタブとスウッシュにかぶさっているので、これをまず先に外します。
2-1. ヒールカラーに沿って走るステッチを、上部の端からリッパーを使って外していく。
2-2. ヒールカラーを持ち上げて、リッパーでスウッシュを外した後、ヒールタブを外す。
2-3. 次に、アイレットロウとトゥキャップのステッチを外し、トップレイヤーのパーツをすべて取り外す。
2-4. ここから、残りの部品を一つひとつ外し、アッパーを完全に分解していく。
型紙の作成
分解したスニーカーを元に、こだわりの素材や機能性素材、あるいは別の靴のソールを使って、既存の枠にとらわれずに感性のおもむくまま、自分が描く完璧なカスタムスニーカーを作り出していきましょう。
*パーツを外したら、混同しないようにマーカーペンでそれぞれの名称を書いておくこと。
1) 外側
「それぞれのパーツを画用紙などに写し取って型紙をつくり、それに合わせて素材をカットすれば、まったく新しいカスタムシューズをつくることができます」
2) 内側
「靴の内側のカスタマイズをすることは通常ほとんどありませんが、分解した内側のパーツを使ってもちろん型紙がつくれます。この型紙に合わせて新しい素材をカットし、内部も一緒にカスタマイズするのもいいですね」
3) 再構築
「スニーカーの再構築は、複雑なプロセス。型紙と靴型、素材、靴づくり用のツールが必要です。私たちが開催している靴づくりのクラスでは、一通りの工程を4日間でお教えしています」
The Shoe Surgeon x ファーフェッチのビデオシリーズ。次回は、Surgeon Studios チームがペイントを使ったカスタマイズの方法を紹介してくれます。