世界的なプライド月間は6月とまだ遠いものの、日本では早くも東京から<プライド>シーズンがスタート。4月22日から始まった「東京レインボープライド2022」には、ファーフェッチ(FARFETCH)も協賛企業として参加しました。
まだ具体的に盛り込まれてはいませんが、元国連事務総長のパン・ギムン氏が「LGBT は<誰も置き去りにしない>という SDGs のモットーに含まれている」とインタビューで述べるなど、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも社会的な注目は年々高まっています。
そんな LGBTQ+ コミュニティは、早くからファッションと密接に関わってきました。Christian Dior(クリスチャン・ディオール)から Yves Saint Laurent (イヴ・サンローラン)、 Alexander McQueen (アレキサンダー・マックイーン)に Jil Sander (ジル・サンダー)まで、そうしたバックグラウンドを持つ偉大なデザイナーを挙げればきりがありません。また、昨年のプライド月間には、 Versace (ヴェルサーチェ)や Balenciaga(バレンシアガ)のようなラグジュアリーメゾンをはじめ、Coach(コーチ)、UGG(アグ)といった名だたるブランドがレインボーコレクションを発表するなど、その繋がりは年々強固なものに。
そんな中、まさに今 <旬>な顔ぶれにも、オープンに LGBTQ+ コミュニティを讃えるデザイナーが多く存在しています。こちらも枚挙にいとまがありませんが、今回はアップカミング〜中堅まで、Charles Jeffrey Loverboy (チャールズ ジェフリー ラバーボーイ)、AMI Paris(アミ パリス / アミ パリ)、Jacquemus(ジャックムス)、JW Anderson(ジェイダブリュー アンダーソン)の 4 ブランドをピックアップ。
いずれも、一つ取り入れるだけで今の空気をまとうことができる注目ブランド。さらにそのクリエイティビティの裏にある精神を感じることができれば、きっと毎日のファッションにより深い意味が生まれるはず。これからプライド月間に向け、インクルージョンと多様性の重要さをぜひ振り返ってみてください。
Charles Jeffrey Loverboy
Charles Jeffrey Loverboy グラフィック セーター
<猫耳ニット帽>で日本の SNS でも話題になった Charles Jeffrey Loverboy は、スコットランド出身の Charles Jeffrey (チャールズ・ジェフリー)が 2015 年に立ち上げたブランド。<クラブキッズ > としてアーティストやドラァグクイーン、詩人たちに囲まれていた彼は、同時にパリのDior(ディオール) のアトリエで修行をしたり、ロンドンの名門 Central Saint Martins (セントラル・セント・マーチンズ)で学ぶなど、デザイナーとしての堅固なバックグラウンドをあわせ持っています。英業界紙 『BoF』 では「ロンドンの若い世代に、かつて Alexander McQueen がやったように語りかけている」と評される通り、パンチの効いたクリエーションだけでなくブランドのあり方そのものへの支持も絶大。
イーストロンドンのクラブでクィアな 《Loverboy》 ナイトを開催し、それが話題になってファッションブランドの立ち上げに繋がったというバックグラウンドはもちろん、デザイナー本人のアンドロジナスなファッションやメイクにも注目が集まっている Charles Jeffrey Loverboy。過去のプライド月間には、Topshop/Topman (トップショップ/トップマン)とコラボレーションしたレインボーコレクションを発表するなど、オープンに LGBTQ+ コミュニティを推進しています。
<猫耳ニット帽>はSNSで話題に
Charles Jeffrey Loverboy Bear リブニット ビーニー
ジェンダーフルイドでアバンギャルド、エキセントリックながら意外に取り入れやすいアイテムたちは、BTS のジミンをはじめ、各国セレブリティにも愛用者が多いことでも有名に。
日本の Tiktok で話題となった<猫耳ニット帽>の他にも、ウィットのきいた小物やカラフルなニットウェア、そして故郷スコットランドの伝統柄であるタータンチェックを再解釈したパンツやアウターなどは、一点取り入れるだけで着こなしをユニークなものにしてくれるはず。
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AMI
各国で人気急上昇中のイットブランド、AMI Paris は、2011年にフランスのパリで設立されました。デザイナーの Alexandre Mattiussi (アレクサンドル・マテュッシ)のイニシャルでもあり、彼が手紙の最後に添えていたサインから取ったというブランド名「AMI」は、フランス語で「友達」を意味する単語。メンズウェアのブランドとして立ち上げられたものの、2019 年からはウィメンズもスタートしました。フレンチカジュアルなテイストに程よいモード感をプラスしたベーシックなアイテムは、スナップや SNS でも見ない日はないほどで、「どこのブランド?」なんて思っている人も多いはず。
フランスの権威あるファッションコンテスト ANDAM でグランプリを受賞するなど、業界でもその実力が認められている AMI 。「友情、愛、インクルージョン、平等」という価値観を前面に押し出し、 2020年のプライド月間には GLAAD(中傷と闘うゲイ&レズビアン同盟)を支援するためのレインボーコレクションを発表するなど、コミュニティへも積極的に貢献しています。
アイコニックな《Ami de Coeur》コレクション
AMI のアイコニックなアイテムといえば、やはりハートとイニシャルの「A」を組み合わせたロゴが印象的な《Ami de Coeur (アミ・ド・クール)》シリーズ。「心の友」という名前の通り、ニットやスウェット、T シャツなど、長く使えるベーシックなアイテムをユニセックスで豊富に展開しています。シーズンごとに様々なカラーを取り揃えているので、着こなしのアクセントにもなり、トータルカラーコーデ、カップルや友達同士でのペアルックにも活躍しそう。
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Jacquemus
Jacquemus Capri クロップド ショートスリーブ シャツ
構築的でセンシュアルなデザインの中にどこかリラックスした南仏の風を感じる Jacquemus(ジャックムス)。フランスはプロヴァンス地方出身の Simon Porte Jacquemus(シモン・ポルト・ジャックムス)が 2009 年に立ち上げたブランドです。設立後わずか 3 年でパリ ファッションウィーク、いわゆるパリコレでのデビューを果たし、以来ファッショニスタたちを魅了し続けてきました。Comme des Garçons(コム デ ギャルソン)の川久保玲と Adrien Joffe(エイドリアン・ジョフィ)からのサポートを受けたり、若手デザイナーの登竜門である LVMH プライズで審査員特別賞を受賞するなど、若くしてその才能は折り紙つき。
デザイナーによるインスタグラムのポストも注目されていて、フォロワーには Dua Lipa (デュア・リパ)や Rihanna (リアーナ)、Beyoncé(ビヨンセ)といった名だたるセレブリティが名を連ねているほど。そんなブランドの SNS アカウントは、パートナーとの写真や、バッグでつくった<レインボー>のビジュアルを投稿するなど、 LGBTQ+ コミュニティへも積極的に言及しています。
2021年にはプライド月間に合わせて LGBTQ+ のカップルを起用したキャンペーンを展開したほか、ラッパーの Bad Bunny(バッド・バニー)がピンクのミニドレスとサンダルをまとったビジュアルを使うなど、多様性とインクルージョンを讃える取り組みを行いました。また、最近ではファンによるホモフォビア的なコメントに対し、「私のバッグはあなたを求めていない」とやり返すなど、デザイナー自身もオープンにコミュニティを推進しています。
カラフルなイットバッグやレザーグッズ
そんな Jacquemus のアイコニックなアイテムといえば、やはりカラフルなイットバッグたち。スクエア型の Le Chiquito や Le Bambino、丸いハンドルがモードな新作 Le Sac Rond、そしてメンズのネックポーチも着こなしのアクセントに。また、カッティングが絶妙なドレスや、カットアウト、ノットディテールのトップスなど、カラフルなナチュラル素材を用いつつモードに仕上げたアイテムも狙い目です。
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JW Anderson
北アイルランド出身のJonathan Anderson(ジョナサン・アンダーソン)が 2008 年にロンドンで立ち上げた JW Anderson(ジェイダブリュー アンダーソン)は、英国トラッドをベースに、ポップで芸術的なエッジをきかせたデザインが人気です。創業者の Anderson は、 LOEWE(ロエベ)のクリエイティブディレクターとしても知られていますが、英国ファッション評議会によるファッション・アワードの常連でもあります。
最初はメンズブランドとして誕生したものの、その頃からジェンダーにとらわれない服づくりを行ってきた JW Anderson。David Wojnarowicz(デイヴィッド・ヴォイナロヴィッチ)や Tom of Finland(トム・オブ・フィンランド)といった LGBTQ+ アーティストの作品を取り入れたコレクションを発表したり、家を失ったLGBTQ+ の若者たちを支援する団体 akt にEC売上の10%を寄付したりと、LGBTQ+ コミュニティに対する取り組みにも積極的です。
遊び心のあるデザインが人気