brands2021年11月15日月曜日

DieselとY/Projectのクリエイティブディレクターを務めるGlenn Martensにインタビュー

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元記事(英語):JADE BROCK

 

最近のファッション業界において、大きな変化をもたらすデザイナーはほんの一握りと言えるだろう。そんな数少ないデザイナーの一人が、Diesel(ディーゼル)のクリエイティブディレクターに新しく就任したGlenn Martens(グレン・マーティンス)だ。90年代後半に自分で初めて買ったものの一つがDieselのジーンズだったというMartensにとって、今の状況は物事が一周したかのよう。そんな彼が率いるクリエイションによって、元祖〈デザイナーデニム〉ブランドは待望のカムバックが期待される。

 

Glenn Martensとは?

 

DieselY/Project(ワイ・プロジェクト)のクリエイティブディレクターを兼任するGlenn Martensは、パリを拠点にする新世代ファッションデザイナーの一人。コンセプチュアルで先進的なコレクションにユーモアを加えることで、ストリートウェアの革命を牽引している。そんなMartensはベルギーのブルージュ出身で、ファッション業界と出合いは偶然の巡り合わせだった。 

 

ファッションデザイナーを志したきっかけは?
「高校を卒業後、何かクリエイティブなことがしたいと感じていました。そこで、建築を学び始めたところ、そこで出会ったとてもクリエイティブな人たちがアントワープにある有名なファッションアカデミーについて教えてくれたんです。そして、アントワープ王立芸術アカデミーに合格し、すぐにこの世界に魅了されました」

 

同アカデミーを首席で卒業したMartensは、Jean Paul Gaultier(ジャンポール・ゴルチエ)から、ウィメンズウェアのプレコレクションとメンズウェアライン〈G2〉のジュニアデザイナーとしてキャリアをスタートした。2012年には自身の名を冠したブランドを立ち上げ、パリファッションウィークでデビュー。3シーズン、コレクション発表を続けた。

 

MartensはY/Projectの創業デザイナーYohan Serfaty(ヨハン・セルファティ)のファーストアシスタントを務め、2013年に彼の亡くなった後、クリエイティブディレクターを引き継いだ。そして、2020年10月にはDieselのクリエイティブディレクターに就任し、注目の的に。革新的なデザインアプローチで知られるMartensこそ、おそらくブランドが探し求めていたファッションの世界での意表を突く組み合わせにふさわしい存在だ。

 

Y/Projectの歴史

 

パリを拠点とするY/Projectは、2010年にYohan Selfatyが設立。職人技と個性を活かした小さなメンズウェアブランドとしてスタートし、2013年にはブランドを引き継いだMartensがウィメンズウェアも開始。数シーズンのうちに、Rick Owens(リック・オウエンス)にインスパイアされたようなストリートウェアブランドから、ミレニアル世代やセレブたちがこぞって纏うブランドへと変わっていった。ドラマチックでダークな世界観を核としながら、プロポーションと脱構築性への遊び心溢れるアプローチを駆使して、コンセプチュアルなコレクションを制作。コレクションでは、汎用性とウェアラブルであること、そしてジェンダーフルイディティを最も大切にしている。

 

Martensは2017年、フランスの権威あるANDAM賞を受賞。賞金28万ユーロと、Saint Laurent(サンローラン)のFrancesca Bellettini(フランチェスカ・ベレッティーニ)CEO兼社長から1年間指導受ける権利を手に入れた。 

 

Y/Projectは、大反響を呼ぶコラボレーションプロジェクトの数々に取り組んできた。その中で忘れてはならないのが、UGG(アグ)との協業だ。発表後、瞬く間にアイコンとなったサイハイブーツは、リアーナが2018年のコーチェラフェスティバルで着用したことによって注目を浴びた。まるで温かいバターが入った壺に足を入れたかのような滑らかな履き心地のブーツは、従来のスタイルの限界を押し広げるというGlenn Martensならではの完成を活かした一足だ。

 

さらに2020年秋冬には、世界有数のアウターウェアブランドCanada Goose(カナダ・グース)とのコラボレーションを発表。ユニセックスな全6型カプセルcoatsコレクションは、ベルギー人デザイナーのコンセプチュアルな感性を反映した、自由で様々な着こなしが楽しめるのが特徴。脱構築的なウィンタージャケットjackets は、ボタンなどのディテールでボリューム感を調節し、クラシックなスタイルを再構築したMartensらしいデザインだ。とても暖かなで着心地の良いアウターウェアでありながら、デフォルメされたシルエットが魅力を放つ。

 

Dieselの歴史

 

1978年の創業以来、Dieselはオルタナティブなデニム素材と示唆に富んだ広告キャンペーンの草分け的な存在だ。イタリアを拠点としながらも、Dieselはずっとイタリアらしくないことで知られている。他のイタリアンブランドがトレンドを追いかける一方、Dieselのデニムは常にそのルーツに忠実であり続けた。同ブランドが制作したのは、シグネチャーであるダメージ加工とビンテージライクなディテールで着古したような風合いに仕上げたジーンズ。この革新的かつ回帰的なアプローチで、一気に世界的なブランドへと上り詰めた。

 

Dieselならではの皆を驚かせるような力も健在だ。同ブランドは90年代に広告キャンペーンを始め、『For Successful Living(フォー・サクセスフル・リビング)』というキャッチフレーズが誕生。創業者Renzo Rosso(レンツォ・ロッソ)は、そこに〈Dieselの服を纏うことは人生を謳歌すること〉という思いを込めた。また、人種問題、銃による暴力問題、宗教問題をテーマとした一連のキャンペーンは、ブランドにとって最も議論を呼んだ広告の一つだ。中でも、1995年にDavid LaChappelle(デビット・ラシャペル)が撮影した広告『Kissing Sailors(キスする水兵)』は、当時のビル・クリントン米大統領の下、同性愛者であることを公言しないかわりに入隊を認める〈Don't ask, Don't tell(聞かない言わない)〉法案が可決した時期に発表され、物議を醸した。

 

Martensは、限界を押し広げるというブランドの美学にぴったりとマッチする先進的な感性によって、Dieselに反骨精神溢れるエネルギーを取り戻そうとしている。彼が目指すのは、Dieselのデニムがその名を馳せるようになった理由を世界に思い出させること。Martensは着任してから数ヵ月、ブランドのアーカイブを調べたり、生産背景を学んだり、そして、今後いかに改革していくかについて考えたという。彼にとって初のフルコレクションとなる2022年春夏シーズンでは、ブランドの定番品として継続して展開するコアコレクション《Diesel Library(ディーゼル ライブラリー)》も始動した。

 

Dieselの未来

 

Dieselの美学とあなたのブランドへのビジョンについて、どのように考えていますか?
「Dieselのビジョンとこれからの計画は、とてもはっきりしています。まず第一に、服だけでなく社会的・環境的サステナビリティに取り組むライフスタイルブランドとなること。Dieselはデニムに関する世界有数の知識を持っており、これをサポートしながら、常に意識していきたいと考えています」

 

「着任して最初の大きな仕事は、サプライチェーン全体と生産工程を問うことでした。わずか半年間で全体の生産工程を完全に見直し、《Diesel Library》が生まれました。このプロジェクトは、ジーンズに加え、ドレスやジャケットなど、ワードローブに欠かせないデニムアイテムが中心になっています。ブランドを代表する定番スタイルが完全にエシカルになることを構想し、開発しました。たった半年という短期間でこのような改革ができたのは、素晴らしいこと。Dieselにとって、透明性はサステナビリティへの取り組みの一部なので、可能な限りクリーンな方法でデニムを生産していきたいです」

 

最新コレクションについて教えてください。
「Dieselは、あらゆる人のためのもの。着る人の背景やユニークなストーリー、ジェンダー、年齢に関係なく、すべての人に何らかの形で語りかけるようなブランドです。そんなインクルーシビティを2022年春夏コレクションにも反映させることを心掛け、折衷的でさまざまな着こなしを気軽に楽しめるものをつくりました。ブランドらしい楽しさと活発なエネルギーを表現したかったんです。Dieselが大切にしているのは、溢れる楽しさと人生を謳歌すること。アクティブなブランドなので、熱狂を実験的かつ意外性のある方法で表現することを目指しています」

 

デザインのインスピレーションは、どこで見つけることが多いですか?
「このコレクションの着想源は、ブランドのヘリテージと核となる価値観です。それらを再解釈して、よりコンセプチュアルなアプローチと融合しました。それは、ウォッシュや加工、素材・色・グラフィックの組み合わせにに表れています。Dieselには、極めて独特でユニークな世界観があります。なので、まずアーカイブを称えることから、クリエイションを始めたい思いました。アーカイブにあるほとんどのスタイルが、今でも古さを感じさせずコンテンポラリーであることには、驚かされます」

 

Dieselのアイテムの中でお気に入りは?
「まず第一に、デニムアイテム。特に、ベーシックで長年穿くことができる《Diesel Library》のアイテムですね。2022年春夏のショートフィルムに登場した主人公が着用していたブーツと一体化したジーンズは、普遍的で汎用性が高いので大好きです。あとは、実験的なプリントジーンズや、クラックペイントのモチーフを施したオーガンジーのスモックドレス、サイケデリックなスニーカーも気に入っています」

 

 

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