テキスト:Aguri Kawashima
テーラード仕立てのクリーンな洋服を日常のワードローブとして取り入れるのは、少しキマりすぎているような気がして難易度が高い。品がありながらもデイリーに使えて、かつどこか少しスパイスの効いたようなメンズウェアがあればいいのに...。そんな現代的なメンズウェアのニーズを叶えてくれるのが、元Supreme(シュプリーム)のヘッドデザイナーであるLukeMeier(ルーク・メイヤー)が率いるブランド、OAMC(オーエーエムシー)だ。カルチャーの要素を織り交ぜつつもモダンで洗練されたデザインと、メゾンブランドにも劣らないクオリティーを兼ね備えたOAMCの人気の秘密にフォーカスする。
ストリートの感性が光るデザイナー、ルーク・メイヤー
メイヤーが幼少期を過ごしたのは、カナダの西海岸。ロサンゼルスやニューヨークのシーンとも交わりがあったその地で、メイヤーはグラフィティやスケート、ヒップホップなどのストリートカルチャーに囲まれて育った。Supremeの創設者であるJamesJebbia(ジェームス・ジェビア)との出会いから同ブランドで働き始め、同時にFIT(FashionInstituteofTechnology、ニューヨーク州立ファッション工科大学)でデザインを学ぶ。イタリアへ留学しテーラリングを学んだその後、2014年にビジネスパートナーのArnaudFaeh(アルノー・ファー)と共に、自身が理想 とするものを生み出す場としてOAMCをローンチした。2017年からは、妻のルーシーと共にJilSander(ジル・サンダー)のクリエイティブディレクターも兼任。クリエイティブなカップルとしても認知され、そのライフスタイルや人間性も注目を集めている。
機能性を備えたエレガントなストリートウェア
OAMCが革新的だったのは、今でこそスタンダードとなったストリートとラグジュアリーが融合するメンズウェアをいち早く提案したこと。ヨーロッパが誇るラグジュアリーなものづくりに、メイヤーが蓄積してきたユースカルチャーのイメージを注ぎ込むというアプローチは、ブランド設立当時のファッション業界では革新的だった。メイヤーはメンズウェアを製作するにあたって機能性を最も重視。視覚的なデザイン性だけではなく、服がいかに機能するかを考えている。このセンスは、ゆったりした服装で街中を駆け抜ける、スケーターたちが得意とするところ。そのため、服の構成要素を大きく占める素材をクリエイティブにおいての重要な要素として位置づけ、その追求に割く時間は惜しまないという。ハイクオリティなファブリックやマテリアルを求め、日本を含めた世界各地に自ら赴いているそう。また、イタリア留学でテーラリングを学び、その奥深さに感銘を受けたことも、機能性や素材にこだわる所以だろう。
そんな要素が融合して出来上がるのは、今の時代に合った<クール>を提案するストリートウェアの肩の力の抜けたアティチュードと、上質な素材、テーラリング、機能性を兼ね備えるウェア。そこにはカルチャーに理解がある大人の余裕と遊び心が感じられ、シルエットはオーバーサイズなのに品があり軽やか。アクティブで現代的なライフスタイルを営む人にぴったりだ。
スタンスを明確にするコラボレーション
一種の商業的なプロジェクトと見られがちなブランド同士のコラボレーションだが、メイヤーはより良いプロダクトを生み出すことが目的であればと、コラボに対してもポジティブなマインドを示す。そんなOAMCが初めてタッグを組んだのは、彼の古巣であるSupreme。コラボアイテムの売上金が慈善団体に寄付されるというチャリティーキャンペーンで、社会的なメッセージをデザインに乗せて発信することもあるOAMCらしさを感じさせる取り組みだった。2019年からは、adidasOriginals(アディダスオリジナルス)とのコラボシューズもローンチ。OAMCの素材開発と研究、そしてadidasのアーカイブと技術革新を融合したプロダクトの人気は凄まじく、世界中のファンが新作を待ち望むコラボのひとつとなっている。また、写真家の森山大道やミュージシャンのDanielJohnston(ダニエル・ジョンストン)など、カルチャーと繋がるコラボからもブランドらしさを垣間見ることができる。
ブランド名が意味する、変化し続ける軽やかさ
OAMCというブランド名には元々の由来がない。というのも、メイヤーがアルファベット4文字を視覚的な良さで組み合わせただけのものだからだ。しかし、ラッパーのKeithCharles(キース・チャールズ)をモデルに起用した2021春夏キャンペーンのインスタグラムの投稿では「OpenAboutMomentousChange」のハッシュタグが、2020秋冬の投稿では「OtherAnswersMayCome」のハッシュタグが目に留まる。これは、OAMCの4文字が頭文字となるようなシーズンごとのコンセプト。毎シーズン意味がアップデートされていくこのブランド名にも、常に変化し続けるという革新的なアティチュードが込められている。
OAMCを選ぶならまずコレ:定番人気のアイテム
まずチェックしたいのは、リラックスムード漂うシャツ。特にフラットで身幅の広いボクシーなシルエットや大判のグラフィックプリントは、OAMCらしいエッセンスが感じられるデザインだ。
履き心地が良さと厳選されたテキスタイルから生まれるクリーンな印象で、さまざまなオケージョンにフィットするパンツ。ベルト一体型やドローストリングなど、ベルトを必要としない機能的でイージーなデザインが揃う。
OAMCが提案するスタイルを完成させるのに欠かせないのが、クリーンなスニーカー。ホワイトを基調としたものが多く、ベーシックなデザインをボリュームのあるソールと上質な素材でモダンにアップデートしている。
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