Virgil Abloh (ヴァージル・アブロー)が設立した Off-White™️ (オフホワイト)はファーフェッチが保有する New Guards Group (ニューガーズ グループ)が運営するブランド。2021年11月に41歳の若さで亡くなったヴァージルは、ファッションにとどまらず様々な業界やコミュニティに変革をもたらしました。そんな彼の偉業が次の世代に着実に種をまき、クリエイティビティの輪を広げています。今回は、彼と仕事をしてきた次世代のクリエーターたちのインタビューを、撮り下ろしのビジュアルと共にお届け。新世代のクリエイターへ受け継がれる精神とその影響力をあらためて振り返ります。
「ヴァージルの成し遂げたことの延長線上に、私たちの世代がある」
―― Djiby Kebe / フォトグラファー & Dayanne / Beavenue Projects 共同創設者
一組目はフランスから。パリを拠点に活動するフォトグラファー Djiby Kebe(ジビー・ケべ)氏と、コンサルティングスタジオ Bienvenue Projects(ビアンヴニュ・プロジェクト)の共同創設者 Dayanne(ダイアン)氏が、ヴァージルとの出会いやその影響力、そして次世代のクリエーションについて語ってくれました。
黒人クリエイターの未来を永久的に変えた
ジビー「ヴァージルが 2000 年代初頭から亡くなるまでの間に成し遂げたことの延長線上に、私たちの世代があるのだと思います。ヴァージルが私たちの今いる世界を形作り、築き上げました。私たちは彼が遺したものを受け継いで未来の世代に伝えていくのです。ヴァージルがやってきたこともすべて、彼自身が若かりし頃に尊敬していた人々に影響を受けていました。ヴァージルは、今でも私たちと共にあります。私たちの心に、そして私たちがこれから行うすべてのことに、その存在がありますから」
「私はヴァージルの一挙一動を見守っていたので、常に彼の影響を受けてきました。あらゆることを見事にこなしてしまうその姿に驚いたのを憶えています。彼は成功したからといって傲慢になることもなく、いつもポジティブで周りを明るくしてくれました。そして、常に若い世代に夢を叶える方法を教えようとしていたんです。西アフリカをルーツに持つという共通点も、私が彼に影響を受けた理由のひとつです。彼のような黒人男性が、たくさんの人々を巻き込んでアートを生み出すところを見ていると、本当に感動します。ヴァージルは、アートやファッションの世界における黒人クリエイターの未来を永久的に変えることに成功しました」
ヴァージルほど好奇心旺盛な人はいない
ジビー「私は学生時代、パリ市郊外や近郊地域に暮らす人々とファッション業界との関係性についてのプロジェクトに取り組んでいたのですが、ヴァージルがそれに興味を持ってくれたのがきっかけです。良い服を着ていれば他人が自分を見る目も変わります。自分がデザイナーズブランドの服を着ているべきだという考えをもって育った私にとって、とても印象に残るプロジェクトでした」
「ヴァージルと 9 月にパリで会う少し前、私は両親の出身地であるマリ共和国を訪れていたんですが、彼は私の旅について興味津々でした。家族の様子や国の情勢、何を見て何が気に入ったのかなど、様々なことを尋ねてきましたよ。私は 21 年生きてきた中で、ヴァージルほど好奇心旺盛な人に出会ったことがありません。彼はいつもたくさんの質問を投げかけてきました。人や世界に関して常に学ぼうとするその姿勢は、私の生き方にも大きな影響を与えましたし、これからも決して忘れることはありません」
ヴァージルの教えは受け継がれる
ダイアン 「私たちの世代は、自分たちの繋がりに力をもらっていて、意識の高い柔軟な人が多いと感じます。そして次世代のクリエイターたちには、さらなる勇気を持ってほしいですね。人生は予測不可能ですし、何にでも立ち向かう覚悟をしなければなりませんから」
「ヴァージルが教えてくれたことを、次の世代に伝えていきたいと思っています。彼自身もたくさんの人々から学び、それを私たちに分け与えてくれました。未来を担う若い人たちに、その知識を伝達していくのが私たちの役目です」
「枠にとらわれないのが私たちの世代。ヴァージルは"万能の天才”でした」
―― Octavia Bürgel(オクタヴィア・ビューゲル)/ライター、フォトグラファー、エディター
二人目は、NY出身でベルリン在住のライター、Octavia Bürgel(オクタヴィア・ビューゲル)氏。Off-White の最新コレクションを纏った彼女をパリで撮り下ろしました。
ヴァージルの遺したレガシー
オクタヴィア「ライターで建築家の Mahfuz Sultan(マファズ・サルタン) とヴァージルが企画していた『Figure Skating』というプロジェクトに参加しないかと誘われたのが、私たちのコラボレーションの始まりでした。2019年の終わりから数ヵ月間にわたり、アフリカ系アーティストとその作品にフォーカスした出版物というアイデアを具現化していきました。彼らとなら、どんなアイデアでも実現可能とすら思えましたね」
「異なるコミュニティに属していたり、違った経験を持つ人々が同じフィールドで交流し相互に作用することは、容易ではないですよね。ヴァージルは、自身が身を置くファッションや音楽、アートといった様々な世界に、新しい人々を取り込むことに尽くしていました。そんな彼の生き様が、築き上げた人間関係を通じて生まれるものこそが、真のレガシー(精神的な遺産)だと教えてくれたのです」
愛や感謝の気持ちが作り上げたヴァージルのコミュニティ
「ヴァージルは、たくさんの人に自信と居場所を与えてくれました。たとえ誰がどこにいても、そこが彼らの属する場所で、自由に自分を表現できると感じさせてくれたのです」
「ヴァージルは、まさに究極のポリマス(万能の天才)でした。DJ、デザイナー、建築家、思想家としてマルチに活躍し、さまざまな人にインスピレーションを与えてくれたのです。優先順位を付けたり選ばなくてはならなかったそれまでと違い、ひとつのカテゴリーや枠に囚われなくてもいいのだということを、私たちの世代に気付かせてくれました」
「より多くの人々が、ヴァージルのようにコミュニティを築き上げ、愛や感謝の気持ちを友人や支援してくれた人たちに伝え、そしてその輪を拡げることができるよう願っています。誰かのために何かをし、その人がまた別の誰かのために同じことをする。その連鎖が続けば、未来の世代に思いやりと助け合いの輪が拡がっていくはずです」
Off-White の歴史
引き継がれるヴァージルのクリエイション
シカゴ出身のヴァージル・アブローは、ウィスコンシン大学で土木工学を学び、その後イリノイ工科大学で建築学の修士号を取得しました。2002年、わずか22歳で Kanye West(カニエ・ウェスト)の右腕となり、マーチャンダイジングからアルバムのアートワーク、セットデザインに至るまで幅広い役割を担うようになります。2012年に初のレーベル Pyrex Vision(パイレックスヴィジョン)を設立。Champion(チャンピオン)や Ralph Lauren(ラルフ・ローレン)のデッドストックのシャツにスクリーンプリントでデザインを施して話題になりました。A$AP Rocky(エイサップ・ロッキー)は自身のミュージックビデオで同ブランドのパンツを着用しています。
Pyrex Vision によって多くのファンを獲得したヴァージルは、2013年9月にミラノで Off-White を設立。Balenciaga(バレンシアガ)の2012-2013年秋冬コレクションで、 Nicholas Ghesquiere(ニコラ・ジェスキエール)が発表した《Join A Weird Trip》に影響を受けたことがブランド立ち上げのきっかけです。「黒と白の間のグレーゾーンを定義すること」をコンセプトに、ストリートスタイルとラグジュアリーファッションを融合させた革新的なデザインで、ミレニアル世代を中心とした若者の心を掴みました。今やブランドの代名詞となったブラック&ホワイトの斜めストライプや、クロスアローロゴを用いたSNS映えする大胆なデザインも人気の理由です。2015年には、権威あるLVMHプライズで最終選考に残りました。
最先端のストリートウェアブランドとしてカルト的な地位を確立した Off-White は、人気ブランドとの多様なコラボレーションでも注目を集めています。世界的スポーツウェアブランドの Nike(ナイキ)とは2017年からコラボレーションスニーカーを展開しています。ファーストコラボとなった《The10》コレクションでは、"REVEALING"と"GHOSTING"の2つのテーマに合わせた全10足のスニーカーを発表。クラシックなシルエットにオマージュを捧げつつ、オフホワイトらしい美学を投影し、世界中のスニーカーヘッズたちを熱狂させました。2018年春夏には Jimmy Choo(ジミー・チュウ)と、2019年には IKEA(イケア)とのコラボレーションが実現しています。
Off-White の人気アイテムをチェック
#01 アイコニックロゴ x 名画 Tシャツ
Off-White といえば、アイコニックなアローロゴと名画のグラフィック。こちらのアイテムは、2020年春夏から登場したセリフ体の新ロゴをあしらい、バックにはクロスアローに切り取ったカラヴァッジョの名画が配されています。シンプルながらもヴァージルのエッセンスが詰まった1枚です。
#02 大人の気品漂うフーディー
T シャツに次ぐ定番アイテムは、スウェット&フーディーです。オーバーサイズの次のトレンドは、スリムなシルエットやショート丈。ヴァージルもテーラードパンツと合わせたドレッシーな着こなしを好んでいました。
#03 ストライプが目を引く《バルカナイズ》スニーカー
熱狂的なファンも多い Off-White のフットウェアコレクション。特に人気の高い《バルカナイズ》スニーカーは、ソールにセットされたストライプとサイドに施されたアローロゴ、そしてシグネチャーのジップタイが特徴。バルカナイズ製法によって美しいシルエットとしなやかさを実現した一足です。
#04 新作スニーカー《アウト オブ オフィス》
Off-White の2020年秋冬メンズコレクションで初登場した《アウト オブ オフィス (通称:OOO)》は、80~90年代初頭のバスケットボールとテニススニーカーから着想を得たローカットシューズです。ポイントはサイドにあしらったアローロゴとゲルを埋め込んだソール、そしてクラシックでチャンキーなシルエット。キャンペーンヴィジュアルに登場したルックのように、フォーマルなスーツスタイルの外しとして取り入れるのがヴァージルらしい遊び心のある着こなし。
#05 ブランド初の厚底スニーカー《ODSY》
ランニングシューズやトレッキングシューズの要素を詰め込んだ《ODSY-1000》は、2019-20 年秋冬メンズコレクションで初披露され、ラッパーの Offset(オフセット)やヴァージルが着用して話題となりました。近年のトレンドであるチャンキーなシルエットに、クロスアローロゴやインダストリアルベルトのデザインを用いたヒールタブ、クッション性に優れたスパイクなどを組み合わせて Off-White らしい一足に仕上がっています。
#06 使い方はアイディア次第。象徴的なインダストリアルベルト
シグネチャーカラーであるイエローを基調としたインダストリアルベルトは、ブランド創業当時から根強い人気を誇るアイテム。ボトムスの上に巻き付けたり、カメラベルトとして首からぶら下げるなど様々な方法で使用することができます。2017年には Off-White の公式インスタグラムにハウツー動画も公開されています。エッジーなムード全開のインダストリアルベルトで、普段のコーディネートを格上げしましょう。
#07 アイコンモチーフをあしらったiPhoneケースでスマホをアップグレード
Off-White はガジェット小物も充実。クラシックなセリフ体の新ロゴやクロスアローロゴ、ストライプロゴなど、ブランドのアイコンモチーフを遊び心たっぷりに表現したiPhoneケースは、バリエーションが豊富です。毎日身に着けたいとっておきのアイテムを見つけてみてください。