WORDS BY STEPHEN YU
ロサンゼルスを拠点に活躍するDominic Ciambrone (ドミニク・シャンブロン)、またの名をThe Shoe Surgeon (ザ・シューサージョン)。元靴修理職人のシューデザイナーであり、世界で最もレアなビスポークスニーカーのクリエーターだ。
そんな彼が今回、Farfetchとともにエクスクルーシブなビデオチュートリアルシリーズを製作。世界にふたつとないカスタムスニーカーをつくり上げるためにSurgeon Studiosチームや彼自身が駆使している、貴重なテクニックを伝授してくれた。
第2回に登場するのは、Shoe Surgeonのスクールでアシスタントディレクターを務めるTrey(トレイ)。《Nike x Sacai Blazer》を使い、スニーカーをペイントする際の基礎を準備段階から解説してくれる。ビデオを観ながら読み進めていってみよう。
「スニーカーのカスタマイズを始めた頃、まず試したのがペイントでした。高校生の時に初めてカスタマイズしたのはオールホワイトの《Air Force 1 mid》。プラモデル用のペイントとエアブラシを使ってカモフラージュ柄に塗り替えたんです。その後、レザーや素材にもっと合う耐久性のあるペイントを探しはじめました」――ドミニク・シャンブロン、The Shoe Surgeon
ペイント前の準備
材料:
- スニーカー
- マスキングテープ
- カッターナイフ
- ペイントマーカー
- 清潔な布
- アセトン(除光液や消毒用アルコール、塗料用シンナーなど)
- ヒートガン
出したい色の作り方:
「色相環を参考にして色を選びましょう。あとは試行錯誤しながら、好みの色になるまで塗料を混ぜていきます」
ペイントマーカーが手に入らない場合は:
「ファブリックやレザー向けの塗料は、アクリル系の塗料に手芸用品店で手に入るテキスタイルミディアムを混ぜることで作れます。アクリル塗料を、テキスタイルミディアムで薄めて使いやすくすることで、ファブリックやレザーにつきやすくなり、ペイントのひび割れも防げます。アクリル塗料が好みのテクスチャーになるまで、混ぜ込んでいきましょう」
ペイントに向かない部分:
「硬いゴムやプラスティックには、ほとんどの塗料がうまくつきません。無理にペイントしても、ひび割れたりこすれたりして剥がれてしまいます」
表面の準備
実は工場から出荷されたスニーカーには、カラーと素材を守るために特殊なコーティングが施されている。しかし、このコーティングの上からでは、アッパー表面にペイントがうまく乗らない。カスタマイズ後、履いてすぐにペイントがひび割れたり剥がれたりするのを防ぐため、まずはこのコーティングを取り除こう。
1.布をアセトンに浸す。つけすぎず、湿らせる程度に。
2.ペイントを施す箇所だけを、アセトンに浸した布で拭く。
3.表面にペースト状のかすが出てくる靴もある。
これはコーティングが剥がれている証拠なので、ご心配なく。
4.アッパーの表面がなめらかになるまで、拭き続ける。
TIP:布がなければ、コットンで代用も可。
マスキング
プロのペインターがしているように、ペイントしない部分はあらかじめマスキングテープでカバーしておこう。
1.ソールのマスキングは比較的簡単なので、ここから始めて慣れていこう。靴側面から若干
張り出しているソール上部もしっかり覆えるよう、テープの上部を少しはみ出させたまま、
ソールの側面全体に貼る。そして、上部の余ったテープで巻き込んで、
ソールの縁上部を完全に覆う。
2.次に、アッパーの表面を覆っていく。スウッシュやレースステイなど、ペイントしたくない
ディテールをマスキングテープでいったん完全に覆う。
3.ディテールにテープをしっかり貼りつけたら、アウトラインを爪で押し込みながらなぞり、
しっかり接着させる。
4.アウトラインに沿って、軽く、でもしっかりと圧をかけて、余ったテープをカッターナイフで
切り取っていく。力が強すぎるとアッパーの素材を傷つけてしまう恐れがあるので、
テープが切れる程度の力で切っていこう。
5.ステップ3と4をくりかえして、アッパーの一つひとつのパーツをカバーする。
TIP:テープを使う時は、思い切って使うこと。たくさん使えば使う程、うまくいく。
ペイント
ここからは、ペイントを使ってクリエイティビティを存分に発揮しよう。カモフラージュプリントやストライプ、カラーブロッキングなど、思いついたパターンを、好きなツールを自由に使って表現していく。ペイントマーカー、筆、エアブラシ、どれを使ったとしても、基本的なテクニックは変わらない。
1.ペイントは、薄く塗り重ねよう。そのほうがより均一な仕上がりになる。
2.一度に塗ろうとせず、何度も塗り重ねる。そうすればよりはっきりと色が出る。
3.一度塗るごとに、ヒートガンを使って乾かす。
4.はっきりとした色が出るまで、ムラにならないように塗り重ねる。最低でも2、3回は重ねよう。
TIP:ヒートガンがなければドライヤーを使おう。自然乾燥でもいいが、言うまでもなく乾くまでに時間がかかる。
ミスしたら:
「綿棒やコットンにアセトンを含ませて、ペイントがついた部分をやさしく拭き取ってください。再度ペイントする場合は、完全に乾いていることを確認しましょう」
エアブラシとハンドペイントの違い:
「エアブラシはスプレーペイントに似ていますが、もっとコントロールがききます。靴に直接触れないので、色をブレンドしたり、グラデーションをつくる際に使えます。一方ハンドペイントは、筆で直接靴に触れるので、細かいディテールやデザイン、アートワークを施すのに適しています」
このテクニックを使って、スニーカーを修復する方法:
「今回ご紹介した方法を使って、くたびれたスニーカーをきれいにすることもできます。準備工程は同じで、準備ができたらキズやしみにペイントをのせていくだけ。望ましいルックになるまで小さく、薄く塗っていきましょう」
仕上げ
しっかり準備してペイントしたスニーカーは、どこかでこすってしまったり、故意にペイントを落とそうとでもしない限り、ひび割れや摩耗はしないはずだ。しかし念のためペイントの耐久性をさらに強化したい場合は、透明な仕上げ剤を使おう。仕上げ剤には、グロスやセミグロス、サテンなど多くの種類があるが、私たちはマットなコーティングを施して、工場出荷後に近いものに仕上げている。
1.ペイントした後に、薄く均一に塗ること。
2.重ねる前に完全に乾かし、1コートごとに仕上がりを確認しよう。
TIP:全体に施す前にパッチテストをすること。仕上げ剤を使いすぎると、ペイントの色が暗くなったり明るくなったりと変化してしまうことがあるので、気を付けたい。
The Shoe Surgeonのビデオシリーズ、第3回目もお楽しみに。次回はShoe Surgeon Studiosチームが、スニーカーのソールをコーヒーで染める方法を紹介してくれる。