オリジナル記事(英文)BY STEPHEN YU
1906年にイギリス移民のWilliam J Riley(ウィリアム・J・ライリー)が設立したNew Balance(ニューバランス)は、アーチサポートインソールの製造メーカーとしてスタートした。当時ライリーが開発した革新的で柔軟なインソールは、ニワトリが3本足で完璧にバランスを保って立っていることからヒントを得たものである。
警察官や消防士のように長時間立っていることが不可欠な仕事をしている人向けの医療用シューズブランドとして始まったNew Balanceのスニーカーが驚くほど快適なのは、決して不思議なことではないだろう。
世界初の足幅に合わせたウィズサイジングとリップソールを採用したランニングシューズ《Trackster》をリリースした後、New Balanceはランナーやアスリートからも支持されるようになった。同ブランドとスポーツ業界との関係は今でも強く、スケートボードやサッカー用のスニーカーを含む幅広いトレーニングシューズを提供するまでに成長した。
現在、ほとんどのフットウェアがアジアで製造されているが、New Balanceはアメリカのメイン州とマサチューセッツ州にある工場を使用しており、製品の30%はイギリスで作られている。これは同ブランドが遠く離れた国ではなく、近隣の郡で最高のサプライヤーとの関係を築いてきたからだ。クラフツマンシップと素材の質の良さにおいて、競合他社とは一線を画している理由はここにある。
「品質、耐久性、履き心地に関しては、他の最大手スニーカーブランドと比較した場合、New Balanceが総合的に勝っていると感じています。私は少なくとも4年間履き続けている998を持っていますが、あと10年は履き続けられそうな気がします。」 - Zack Schlemmer (Stadium Goodsのシニアエディター)
New Balanceの品番についてよくわからないという人のために、本記事では歴代の名品モデルをリストアップしたのでぜひ参考にしてほしい。
827
1999年にリリースされたNew Balanceの《827》は、レスポンシブなエリートランニングシューズとしてデザインされた。テクニカルなナイロンウェビングレースと反射ディティール、スエードのオーバーレイ付きメッシュアッパー、サポート性を高める熱可塑性ケージングを組み合わせた同モデルは、当時のスニーカーテクノロジーと快適性の最先端を走っていた。Aimé Leon Dore(エメレオンドレ)による鮮やかなカラー展開とNew Balanceの最も偉大なプリント広告の全盛期を彷彿とさせる「Runners Aren't Normal」の広告キャンペーンと共にカムバックを果たした。
992
1996年にリリースされた《992》は、アップルの共同創設者であるSteve Jobs(スティーブ・ジョブズ)も愛用していたことで知られている。ジョブズがiPhoneを発表した際にも着用していた。実は同シリーズのオリジナルデザインを手掛けたのは彼自身だったという。スエードとメッシュのアッパーに、超快適でお父さん世代にも優しいデュアル「ENCAP」と衝撃吸収性に優れた「ABZORB」ソールを採用した同モデルは、KITH(キス)、JJJJJound(ジョウンド)、WTAPS(ダブルタップス)、Joe Freshgoods(ジョー・フレッシュグッズ)といったコラボレーターたちから人気を集めている。
990
安定性、クッション性、柔軟性を兼ね備えた最高のランニングシューズを作ることを目的に開発がスタートした《99x》シリーズのスタートラインとなったのが、1982年に発表された《990》である。高額な価格設定に加え、プレミアムなピッグスエードのアッパーと最先端のテクノロジーを搭載した同モデルは、ステータスシンボルのような存在となった。5回目のイテレーションを経た今、チャンキーなダッドスニーカートレンドの事実上の元祖としての地位を確立しているが、これまでにない最高のランニングスニーカーを求める人たちの間でもその魅力を維持している。
574
New Balanceの《5シリーズ》は、悪路でのランニング向けのランニングシューズとして登場した。当時ライバル会社のほとんどがアジアに生産を外注し始めた中、New Balanceは誇らしげに「Made In USA」の《574》を世に送り出し続けた。また、同モデルはNew Balanceでよく見られたグレー系のベーシックカラーから脱却し、明るいカラーリングで登場した最初のスニーカーの一つでもある。
997
現在はYeezy(イージー)のデザインディレクターであり、《Reebok Pump》の生みの親でもあるSteven Smith(スティーブン・スミス)がデザインした《997》は、《990》のリリース以来あまり進化していなかった《99x》シリーズに新たな方向性を示した。《996》と比較して、《997》はよりクリーンなミッドソール、ボリュームのあるヒール、そしてシャープなつま先を備えている。さらに、世界中のスニーカーファンに愛されるウェッジド・トゥーボックスを初採用。《W997》として初めてウィメンズシューズがリリースされたモデルの一つでもある。
998
《998》は、New Balanceとアメリカのデュポン社(テフロンやナイロンなど革新的な素材の開発で有名な会社)の化学者との共同制作によって生まれた。優れた衝撃吸収性と反発弾性を備えたクッショニング素材「ABZORB」を使用した「ENCAP II」ソールを生み出した。
'「私のお気に入りは997と998です。スリムすぎず、がっちりしすぎないところが気に入っています。80年代半ばから後半に発売されたものですが、モダンに見えるところも好きです。New Balanceとそのコラボレーターたちは、長年にわたってプレミアムな素材とユニークな色使いを駆使して素晴らしい仕事をしてきました。」 - Zack Schlemmer (Stadium Goodsのシニアエディター)
1500
Steven Smithが手がけたもう一つのクラシックモデルである《1500》は1993年にリリースされた。同モデルは小さな刺繍のNロゴを採用しており、今でも未来的な外観を保っている。元々の生産はアメリカで行われていたが、現在はイギリスで生産されている。アメリカバージョンはランニング専用に作られていたのに対して、イギリスバージョンはパフォーマンスのために作られた軽量の合成繊維をプレミアムな素材に置き換えている。見た目が非常にスタイリッシュなため、ランニングシューズとしての機能に疑問を持つ人もいるかもしれないが、Bill Clinton(ビル・クリントン)が大統領時代に選んだランニングシューズはこの《1500》だった。
850
1996年、当時21歳だったNew Balanceののシューズデザイナー、Stephanie Howard(ステファニー・ハワード)は、若者に響くスニーカーのデザインを任された。彼女がデザインしたスニーカーはミニマルなシルエットで、ブランドに新しい風を吹かせた。例えばクラシックな「N」ロゴを取り除き、ヒール部分にはモダンな「NB」ロゴを初採用。また、同モデルはブランド初のユニセックスデザインでもある。2019年には、Aime Leon DoreやNo Vacancy Inn(ノーバカンシーイン)といったブランドとのコラボレーションを通して現代的なリメイクが施され復活した。
New Balance x No Vacancy Inn 850 スニーカー
860
今、《860v10》はランニングシューズのサポートと安定性を必要とするランナーたちにとっての究極の選択肢となっているが、20年前のデビュー時にはかなりの波乱を巻き起こした。《860V2》は通気性の良いメッシュアッパーと未来的なメタリックオーバーレイで構成されており、前作に比べてより洗練された流線型のフォルムを実現している。
991
Steve Jobsが履いていた靴として永久不滅の存在となった《991》は、《990》のシルエットを現代的な視点で再構築したものだ。《990》をベースによりアグレッシブなサイドプロファイルと流線型のトゥーボックスを採用し、2001年にリリースされた。ソールには「ABZORB」のクッショニングと耐久性のあるラバーアウトソールを加えている。大西洋を越えたパートナーシップから生まれたハイブリッドな同モデルは、イギリスのワリントンとアメリカのニューイングランドの工場で製造された。
X90
90年代のNew Balanceの最もアイコニックなシルエットを現代的にアレンジした《X90》は、ブランドのシグネチャーであるクラフツマンシップとレトロな世界観、そしてモダンなディテールを融合させた。デザインは《99x》シリーズのディテールからインスピレーションを得ている。《997》の「Hytrel」ストラップと《991》のミッドソールウィンドウを取り入れ、靴下のようなフィット感を実現するためにニットアッパーを組み合わせた。
247
24時間年中無休の現代人のライフスタイルに合わせてデザインされた《247》は、他にはない抜群のパフォーマンスと快適さが魅力。同モデルは《1300》と《576》のシルエットと《998》のミッドソールを融合させたものである。内側はネオプレーンのブーティが足を包み込み、クッション性の高いフィット感によって一歩先を行く履き心地を実現した。
327
モダンなデザインにレトロなムードを加えた《327》は、New Balanceの《300シリーズ》で見られるいくつかの70年代のデザイン要素を凝縮した。アイコニックなNロゴを初めて採用したシューズ《320》のオーバーサイズなNロゴと《355》のラグ付きアウトソール、そして「SuperComp」の軽量アッパーを組み合わせている。夏に向けたホワイトとグリーン&オレンジのカラーリングで登場した《327》は、パリで開催されたCasablanca(カサブランカ)の2020年秋冬のランウェイショーで初披露された。現代的なフレアアウトソールとさりげなくチャンキーなシルエットを特徴とした同モデルは未来のクラシックシューズになるだろう。
New Balance x Casablanca Idealiste 327 スニーカー