テキスト：高井香子（たかい こうこ）
2021 年 9 月、ファーフェッチはロイヤルティプログラム Access（アクセス）会員で Private Client （プライベート・クライアント）ステージの日本のお客様を対象に、 韓国の人気 NETFLIXドラマ「Mine（マイン）」に登場する衣装としても話題のブランド SOONIL（スーニル）の特別販売会を実施しました。グローバルプラットフォームであるファーフェッチが韓流ドラマの衣装をテーマにイベントを実施した背景には、韓国ファッションの急成長が強く関係しています。本記事では、ライターとして長年韓国のトレンドを見続けてきた筆者が、韓国ファッションの成長と韓流エンタメの関係性について解説します。
韓流ブームを一気におさらい！
現在の韓国人気は「第四次韓流ブーム」と呼ばれています。韓国ファッションについてご説明する前に、まずは韓流ブームの 4 つの変化をおさらいしましょう。
第一次韓流ブームを作ったのは「韓流ドラマ」でした。2003 年頃の韓流ドラマの大ヒットはすさまじく、韓国国内より日本で人気が爆発した俳優もいたほどです。熱狂的な日本人ファンたちが彼らを追いかけていましたね。マダム層がはまっていた印象が残っています。
第二次韓流ブームは「K-POP」です。2010 年には少女時代や KARA（カラ）、BIG BANG（ビッグバン）といった K-POP グループが、日本の音楽チャートで際立った存在感を示しました。圧倒的な可愛さ、スタイルの良さ、そしてカリスマ性は日本の若いリスナーを魅了しました。
第三次韓流ブームは「フード」でしょう。2017 年頃には SNS 世代の若者たちの間で派手な色味の韓国スイーツや韓国料理が大流行。リトル韓国とも呼ばれる新大久保は連日大賑わいとなりました。この頃にはスマホだけで情報収集できるようになり、韓国の最新の情報が簡単に得られるように。私自身も毎月韓国に行っていたので、韓国が本当に近い存在になっていました。
第四次韓流ブームのキーワードは「ファッション」
第四次韓流ブームのキーワードは「ファッション」だと私は考えています。しかもこれは世界的なムーブメントです。韓国エンタメがファッション業界に与える影響は大きく、2021 年にはボーイズグループ BTS（防弾少年団） が、Louis Vuitton（ルイ・ヴィトン）のアンバサダーに起用されました。メンバーたちの個性的な着こなしも注目を集めており、彼らの着用アイテムは各国のソーシャルメディアでトレンド入りするほどです。
2021 年 9 月にニューヨークで開催された MET GALA（メットガラ）には BLACKPINK（ブラックピンク） の ROSÉ（ロゼ） と元 2NE1 （トゥエニーワン）の CL（シーエル） が招待されたことからも、ファッション業界における韓流エンタメの注目度の高さが伺えます。ファーフェッチでも人気K-POP アーティストが着用したアイテムへのアクセスが増加し即完売することがあったそうです。
人気ドラマで脚光を浴びる韓国デザイナーズブランド
韓国スターが着用した衣装やブランドが瞬く間に SNS で拡散され、完売するケースが相次いでいます。無名だった俳優やモデルも、ドラマ内でのスタイリングが注目を浴びファッション業界からのラブコールが鳴り止まなくなることもあるとか。今まで韓流ドラマでは演技ドル（アイドルをしながら俳優をする人）が多かったのですが、最近ではモデルと俳優業を両立する人が増えたため、出演時からそのファッション性が注目されています。
例えば、現在 NETFLIX で配信中の大ヒットドラマ「Mine（マイン）」は豪華絢爛なファッションが話題を呼びました。韓国のデザイナーズブランドと海外ブランドを上手くミックスしたことや、キャラクターの心情とファッションが絶妙にマッチしていたことが注目を浴びました。好みが分かれそうなスリリングなストーリーですが、キャラクターそれぞれの華やかな着こなしは見応えがあり最終話まで見入ってしまいます。本作でダブル主演を務めたイ・ボヨン（ソ・ヒス役）は海外ブランドを中心としたフェミニンなスタイリング、キム・ソヒョン（チョン・ソヒョン役）は韓国ブランドを中心としたクールなスタイリング、コントラストが際立っていました。
「Mine オフィシャル予告編」 Netflix Japan 公式Youtubeアカウントより
SNSでは俳優たちの着こなしを徹底的に分析して発信するファンが続出。日韓共にブランドの紹介や1 シーン 1 シーンの俳優の着こなしが注目され、ファッションアイテムのチョイスから登場人物の心情を推測する人も続出するなど、現在もその勢いはとどまるところを知りません。
「Mine」のヒットは、知名度の低かった韓国デザイナーズブランドが日本でも知られるきっかけともなりました。ファーフェッチの特別販売会でフィーチャーされた韓国ブランド「スーニル」もその一つです。韓国人デザイナー Soonil Kwon（スーニル・クォン）が立ち上げた同ブランドのクラシックかつエレガントなデザインは、登場人物のキャラクターを見事に引き立てていました。
ワールドワイドに発展する韓国ブランド
今、韓国ではスーニルのような韓国オリジナルのデザイナーズブランドが急成長を遂げています。海外の有名アーティストやセレブも日常的に着用するなど、韓国ファッションはアジアのみならず世界規模のブームとなりました。一昔前の韓国では著名人が実際に着用したブランドではなく、似たデザインを販売するプチプラファッションが人気を博していましたが、昨今ではややラグジュアリーな価格帯のアッパーミドルブランドが人気。ファッション業界関係者のみならずドラマ視聴者も魅了したそのクオリティと高いデザイン性が注目されています。スーニルをはじめ欧米に拠点を置くブランドも多く、韓国ファッションはワールドワイドに発展しているのです。
高井 香子（たかい こうこ）・ 韓国トレンドライター
1988 年 7 月 10 日、東京生まれ。自他ともに認める韓国通。 高校生時代のカナダ留学で出会った韓国人の友人がきっかけで、韓国に興味を持つ。大学卒業後、109 ニュースライターとしてキャリアをスタートし、現在はインスタグラムとユーチューブ、NYLON 連載等ライティングをメーンに、雑誌の監修、韓国系キュレーションサイトディレクション、テレビ出演ラジオ等、“韓国”を軸にさまざまな活動をする。
